「鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説2010」(P98)より引用
『10条 スラブの解析』
1. →省略
2. 周辺固定と見なすことのできる長方形スラブが等分布荷重を受けるときは、(10.1)、(10.2)式により2方向曲げモーメントを算定する [図10.1参照]
短辺x方向の曲げモーメント(単位幅につき)
両端最大負曲げモーメント
$$M_{x1}=-\frac{1}{12}w_x{l_x}^2 (10.1)$$
中央部最大正曲げモーメント
$$M_{x2}=\frac{1}{18}w_x{l_x}^2 (10.1)$$
長辺y方向の曲げモーメント(単位幅につき)
両端最大負曲げモーメント
$$M_{y1}=-\frac{1}{24}w{l_x}^2 (10.2)$$
中央部最大正曲げモーメント
$$M_{y2}=\frac{1}{36}w{l_x}^2 (10.2)$$
記号
lx:短辺有効スパン
ly:長辺有効スパン
w:単位面積についての全荷重
$$w_{x}=\frac{{l_y}^4}{{l_x}^4+{l_y}^4}w$$
ただし、有効スパンとは、支持部材間の内法寸法をいう。周辺よりlx/4幅の部分(図10.1のB部)については、(10.1),(10.2)式中、周辺に平行な方向のMx、Myの値を半減することができる。
計算例
(1)はじめに
以前の記事「小梁の設計例-1」と同じ、以下の共同住住宅のあるスパンでスラブ(S1)の設計をしてみようかと思います。
まず、RC規準で示す曲げモーメントは何を表しているかというと、、、
「短辺、長辺それぞれの単位長さあたりの梁の曲げモーメント」
難しく考えず、単なる梁として考えればOKです。
(2)仮定荷重
・スラブ厚は、t=180(mm)とする。
(遮音性を考慮して180mm。構造耐力上は160mmくらいでもOK…。スラブ厚の規定はRC規準に規定されていますが、まぁほぼ気にしなくてOKだと思います。スラブ厚については意匠屋さんと要相談です。)
・床仕上げ荷重は600(N/m2)、下階の天井200(N/m2)とする。
(床仕上げは、間仕切り壁も含めた値でざっくり600N/m2。天井は下階の設備+下地+仕上げの値でざっくり200N/m2。床仕上げがタイル貼り等の場合は重くなるので仕上げ表を確認して仮定します。)
・積載荷重は令85条の住宅用の床設計用(=1,800N/m2)とする。
床荷重は以下とする。
固定荷重D.L.=24×180+600+200=5,120(N/m2)
積載荷重L.L.=1,800(N/m2)
設計荷重T.L.=5,120+1,800=6,920 (N/m2) →7.0(kN/m2)
(3)作用応力の算定
まずは、諸条件の整理。
lx=4.0(m)
ly=6.0(m)
(lx 、ly は、本来スラブの内法ですが、安全側ですし、大梁や小梁の寸法が変わった時にも対応できるようにスパン寸法としています。)
w=7.0(kN/m2)
$$w_{x}=\frac{{6.0}^4}{{4.0}^4+{6.0}^4}7.0=5.84 →5.9(kN/m^2)$$
①短辺方向の曲げモーメントの算定
$$M_{x1}=-\frac{1}{12}w_x{l_x}^2= -\frac{1}{12}5.9×4.0^2=-7.86 →-7.9(kNm)$$
$$M_{x2}=\frac{1}{18}w_x{l_x}^2= \frac{1}{18}5.9 ×4.0^2=5.24 →5.3(kNm) $$
②長辺方向の曲げモーメントの算定
$$M_{y1}=-\frac{1}{24}w{l_x}^2= -\frac{1}{24}7.0×4.0^2=-4.66 →-4.7(kNm) $$
$$M_{y2}=\frac{1}{36}w{l_x}^2= \frac{1}{36}7.0×4.0^2=3.11 →3.2(kNm) $$
図示すると、以下のようになる。
(4)スラブ筋の算定
鉄筋重心位置は以下のように65(mm)とする。尚、隣接スパンや片持ちスラブの関係から、主鉄筋を内側に配筋する場合を考慮し、鉄筋重心位置は、主鉄筋・配力筋ともに同じ位置であるとする。
鉄筋位置は、クロス配筋なので安全側でスラブ中心(=180÷2=90mm)としてもまぁ良いかとは思いますが…。
①主鉄筋(短辺方向 上端筋)
at=Mx1/(ft×j)=7.9×106/(195×(180-65)×7/8)=402.61(mm2)
→D13@200(127×5=635(mm2)) (検定値=402.61/635=0.63)
②主鉄筋(短辺方向 下端筋)
at=Mx2/(ft×j)=5.3×106/(195×(180-65)×7/8)=270.11(mm2)
→D10@200(71×5=355(mm2)) (検定値=270.11/355=0.76)
③配力筋(長辺方向 上端筋)
at=My1/(ft×j)=4.7×106/(195×(180-65)×7/8)=239.52(mm2)
→D10,13@250(71×2+127×2=396(mm2)) (検定値=239.52/396=0.61)
③配力筋(長辺方向 下端筋)
at=My2/(ft×j)=3.2×106/(195×(180-65)×7/8)=163.08(mm2)
→D10@250(71×4=284(mm2)) (検定値=163.08/284=0.57)
(5)算定結果
S1スラブ配筋
主配筋:上端筋D13@200、下端筋D10@200
配力筋:上端筋D10,D13@250、下端筋D10@250
両方向ともに、上端筋にはD13を用いるようにしています。D10だけだと職人さんが踏んだ時に曲がってしまうので。。。
配筋し易いように、上端筋と下端筋は同ピッチとなるようにしています。配筋検査でも楽ですし。。。
RC規準で示された曲げモーメントの算定式は、先人達の実験結果より求められており、詳しく知りたい方はRC規準をじっくり読んでみてください。(My1,My2を求めるときの長さがlyのような気がしますがlxなんですね…)
スラブの応力は、FEM(有限要素法)を用いて解析した方が正確な値が算出出来ますが、積載荷重はもちろん、固定荷重ですら『仮定』なので、、、RC規準に準じて算出して計算しても全く支障が無いのかなぁと思います。(鉄筋位置が危険側にならないよう設計監理する必要はあります)